佐賀県における薬学実習生の受け入れ体制
−あなたの病院・薬局で薬学生を受け入れられますか?−
座長 佐賀県薬剤師会副会長 吉富 直助 先生

 第18回中部薬薬連携協議会研修会として、平成17年2月5日開催されたシンポジウムの内容についてお知らせいたします。お忙しい中、多数の会員の皆様にご参加いただきありがとうございました。大学・病院・薬局の連携により、今後薬剤師がどのような変革をとげるのかを考えさせられる貴重な研修会となったと当協議会としては自負しております。
 今後もこのような薬-薬-薬連携から薬剤師業務がどのようなものかを考える機会を持つことが当協議会での活動方向だと考えております。
ご協力頂いた講師の方々に厚くお礼を申し上げると共に、今後も様々な分野からのご協力をお願いいたします。
基調講演:薬学6年制における長期実務実習の重要性


 九州山口地区実務実習調整機構  会長
 福岡大学薬学部大学院薬学研究科 教授   山口 政俊 先生


 九州山口地区病院・薬局実務実習調整機構は病院と薬局が対等な立場で行うことを特徴としている。現在、佐賀地区では薬局への実習はまだあまり多くはない。今後6年制への移行にともない地域での受け入れ環境の整備が行われることが、今後の地域での薬剤師教育及び薬剤師業務の向上につながる。
 患者中心の医療が社会的ニーズとなり、広い教養、豊かな人間性、医療人としての高い倫理観や的確な判断力、問題解決能力、自己管理能力を得るために「大学と医療現場中心の教育」が6年制移行への根本となっている。

 教員主体の教育から学習者(学生)主体の教育が行われる必要がある。そのために、現場の教育環境の整備が必須となった。単なる知識だけでなく、体験から習得される知識、問題意識を持った薬剤師の育成が実務実習により得られることが目的である。

・長期実務実習について
 1.学生のモチベーションの向上と維持
 2.指導システム作り
 3.カリキュラムの運用方法の整備と啓蒙
 4.潤滑な運用のための環境作り
 5.参加型実務実習の社会的ニーズ

・指導システム作り
 T.指導教員の育成・確保
 U.派遣システム
 V.指導薬剤師の育成・確保
 Vは受け入れ機関に対してだが、大学側との連携システムにより、臨床現場での教育方法論を確立していくことが今後のシステム作りには重要となる。指導者がよりよい教育法を体得するためのトレーニング(薬学教育ワークショップ)の機会を活用して現場薬剤師が教育者としての知識、方法論を学ぶことが自身の能力を高めることにもつながる。

 「夢のある薬剤師を育てる」「夢のある医療(業務)現場を構築する」そのために困難な問題も多々あることが予想されるが、大学人、病院・薬局薬剤師が連携することがそれらを実現する手段であることを確信している。
佐賀県における実務実習の現状と問題点 病院の立場から


  佐賀大学医学部付属病院薬剤部 助教授 藤戸  博 先生


・ 佐賀大学病院における実習の現状
 佐大病院では現在、医学部学生および研修医に対する臨床実習、薬学部学生に対する2週間、4週間の病院実習そして、学部卒業後の薬剤師に対する6ヶ月、12ヶ月の病院研修を行なっている。薬学部生の実習期間については、近年4週間の実習を希望する学生が増加えている。

・ 実習内容
 1. 調剤業務(内服薬、注射薬)
 2. 院内製剤
 3. 無菌製剤(IVH、抗ガン剤)
 4. 服薬指導(院内、院外)
 5. 薬剤情報提供(DI)
 6. 薬物血中濃度測定(TDM)
 7. 治験
 8. 病理解剖見学
 無菌製剤やTDMなど調剤薬局にはない病院ならではの項目も多い、それぞれの業務について見学、実際に作業を行なってもらう。特に病理解剖見学は佐大病院の特徴の一つであり、希望者のみ参加してもらう。これらの実習を行なう前に「治験薬概論」、「TDM概論」などの講義も行なっている。これらの講義は既に大学で受けていることであり必要ないと考えているが、大学によりバラツキがあると感じている。
 実習の評価については、接遇など基本的なことから調剤業務までチェックリストを作成し、定期的に学生自身にも評価をしてもらう。

・ 佐賀県の病院自習の受け入れ状況
 現在佐賀県では、27の病院が実習生の受け入れを行なっている。それぞれの施設でコアカリキュラムの記載されているすべての実習を実施することは不可能であるため、各病院に対して、実施可能の項目についてアンケートを行なっている。病院間の連携による実習にむけての準備を行なっている。

・ 長期実務実習の実現に向けて
 薬学部6年生とそれにともなう長期実務自習にむけて病院としてどのように対応するか学生にどうアプローチしてくか、実習は自分で体を動かして自分で体験して学ぶものである、「教える」という従来のスタンスではなく、学生が何を学びたいのか体験したいのか、学生の自主性にまかせその実現に向けて現場の薬剤師がバックアップするといった方法もあるのではないかと感じている。すでに、「実務実習モデル・コアカリキュウラム」「病院実習テキスト」などができあがってはいるが、「在宅医療」「学校薬剤師」など病院では実習できない項目がある。病院と薬局の連携が重要と考えている。そして実務実習を実現するにあたり、解決しなければならい問題も多い。
 1. 誰が教育するのか
 2. どういう資格で教育するか
 3. 教育している間の業務はどうするか
 4. 報酬やメリットはあるか
 5. 教育内容の標準化
 6. 教育内容や評価をどう保証するか
など、これら検討する必要がある。
佐賀県における実務実習の現状と問題点 薬局の立場から


 佐賀県薬剤師会長期実務実習担当理事   川副 隆裕 先生


・佐賀県における実務実習の現状
 日薬で薬局実務実習会議開催(平成11年9月)
  →病院中心の実習から個々の薬局での現場実習を拡大へ

・実習の質の担保の為の薬局認定要件(平成15年)
 1.保険薬局である
 2..指導薬剤師がいる薬局である
 3..一般用医薬品、医療関連用品の販売を行っている
 4.在宅患者訪問薬剤管理指導届出薬局である
 5.麻薬小売業免許を有する薬局である
 6.医薬品製造業許可取得薬局である
 7.学校薬剤師がいる薬局である
 8.基準薬局である
 9.日薬賠責(薬局契約)等に加入している
1〜5必須・6〜9望ましい用件

・指導薬剤師の認定要件
 1.保険薬剤師であること
 2.薬局での実務経験が3年以上であること
 3.実習生受け入れ薬局に勤務する薬剤師であること
 4.全国共通実務実習テキストに関する研修を受けること
 5.実質的に指導にあたる薬剤師であること
 6.日本薬剤師研修センター認定薬剤師であること
 佐賀の実習生受け入れの現状として、各支郡に機関薬局を設置し、受け入れ調整を依頼している。(スライド1参照


受け入れ薬局は現在42薬局である。当初のアンケートで受け入れ対応を返答していた薬局数からすると、認定要件などから約半数の薬局の受け入れ応需にとどまっている。(スライド2参照


 指導薬剤師の研修については、今後の薬局実習の方向と指導・教育にどのように取り組むのかということを中心に年2回開催されている。
 実習の受け入れ状況は、5名(平成14年)、8名(平成15年)、10名(平成16年)と着実に増加をたどり、今後6年生に向けた大学教育の一環として受け入れ薬局の整備は佐賀県においての薬剤師育成のために必須となるものである。
 様々な問題が今後浮上すると予測されるが、個々の薬局では提供できない教育を、各薬局の連携によりクリアしていくことで、佐賀県における薬局実務実習をよりよいものにできると確信している。
ディスカッション(20:00〜21:00)

   

・薬学部新設大学の増加
 現況、6年制と4+2年制の割合は国立大学で5:5、私立大学では9:1と考えられている。新設増加に対して、実習生受け入れ施設は足りていない。協力した薬局間での受け入れ環境の整備が期待される。

・指導薬剤師のあり方
 指導期間の長期化から、指導薬剤師のレベルアップが必須である。これは今後の薬局機能評価にもつながると思われる。
 現在の指導薬剤師には認定機関の違いによる混乱がみられ、明確な「指導薬剤師」という概念が統一化されていない。若い人を育てるシステムとして進めないと、6年制移行の薬学教育の利点が明確なものとはならない。研修の内容や要件、実務に即した「指導薬剤師」が現在調整されている。

・高等学校(高校生)に6年制と4+2年制の違いが理解できるのか?
 高等学校(高校生)に対して薬学、薬剤師業務の理解を広める大学側の対応が今後重要であると考えている。地域薬剤師の協力も重要である。

・現場の実業務で、どこまで実習生が参加できるのか?
 法的な解釈などを加味して、明確な線を打ち出す予定である。

・受け入れ薬局、指導薬剤師の認定要件のハードルが高いのではないか?
 まず、受け入れてみるという参加意識が大切である。そこから薬局あるいは指導薬剤師が学ぶべきところも多い。自己完結型でなく、地域受け入れ型の体制が利点も多いのではないかと考えられている。

・薬剤師の職能の確保という6年制以降における医師との職能の比較について
 診断から投薬は医師の権限だが、その際の薬剤師の治療への関与は薬物治療という分野において重要である。6年制移行による、薬剤師の能力向上は医師の業務との比較ではなく、医療の中で薬物療法の支援を視点の異なるところから、双方の医療を行うこととなる。
今後、薬剤師のエビデンス、薬物療法の根本となるデーターが重要となることから化学の基礎の部分を学ぶことはその意味でも重要である。

・実習における指導薬剤師の学生に対する評価はどの程度のものなのか?
 6年制における、実習の合否の評価は教育機関である大学が行うものとなる。受け入れ施設を教育機関として考えるのなら、全国統一の評価基準が必要となることが困難な要素となるだろう。
ただし、臨床実習からの適正を選別する機会としても、現場での評価は今後活用できるのではないか?